散らないサクラ

「ごめんな、泰雅。あたしが悪かった。そう、泰雅はなんも悪くない」

「お、かさ」

「秋から聞いたよ、今日の為にしおり作ってくれたんだってね。最近、ずっと話すら出来なくて寂しい思いさせちゃったな」



だきしめられて、おかあさんのからだがあせでしめってることにきづく。

おれのために、はしってくれたの?




おかあさんはからだをはなし、おれのかたにてをおいた。



「泰雅のこと、好きで大好きで愛してるよ。それで、本当に泰雅のお母さんだよ、あたしは。だって、泰雅がどっか言ったって聞いて心臓止まるかと思ったもん」



あはは、とくちをあけてわらった。

たたいたり、だきしめたり、しんけんなかおしたり、わらったり。

おかあさんはころころかおがかわる。



おかあさんだ、おかあさんがきてくれた。

おれはうれしくなって、こんどはじぶんからだきついた。



「ばかぁ、おかあさんのばか!」



ほんとうはだいすきっていおうとおもったけど、いえなかった。

だけどそれをきいていたおとうさんは、ちいさくわらってた。

おかあさんはおれをやさしくだきしめてくれて、おれのあたまになんどもなんどもちゅうをしてくれた。




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