散らないサクラ
“教師”という立場の人間なんてますます信じられるわけがない。
途端、寒気がして俺は佐倉の体を引き剥がした。
「はっ、てめぇも結局教師だ。それを信頼しろってほうがオカシイ」
鼻で笑って佐倉を見下す。
すぐ下にいる佐倉は俺を少し見上げ、懐かしいものでも見るように微笑んだ(気持ち悪い、見るな)。
「分かってる。最初から信じろなんて言わないよ」
そう言って佐倉は一歩、また一歩と俺から遠ざかっていく。
背を此方に向けないまま、ドアまで来ると、佐倉はやっと後ろを振り向き、顔だけ此方向けて笑う。
「また来るよ、秋羽」
二度とくるな、と口から出せば良かったのに俺の唇は形を作らなかった。
その変わり、佐倉が部屋を出て行っても残像のように瞼の裏に佐倉の笑顔が張り付いてはなれなかった。