散らないサクラ
* * * *
佐倉がここへ通うようになって一カ月が経った。
相変わらずの俺と、相変わらずの佐倉。
平行線を描き続けるこの関係は俺にとっては喧嘩が引き分けになった気分で、もどかしい。
“世界をみせてやりたい”と言っておきながら、何もアクションを起こさない佐倉に苛立ちを感じていた。
「…………」
チ、チ、チ、チ、チ。
誰もいない休憩室、時計の秒針が刻む音が聞こえる。
脳内がぼうっと霧がかかったように物事の明確性を失わせていく。
ああ、薬を飲むのを忘れたからか。
俺は虚ろ眼で胸ポケットに手を伸ばし、力ない手で薬の小瓶を取り出した。
蓋をあけて机に薬をばら撒く。
「…………」
“精神安定剤”という言葉で片付けてしまえばそれまでだ。
俺は精神に異常があるのだから。
だが佐倉とであってから(悔しい事に)薬の飲む回数が減った。