散らないサクラ
「……佐倉」
いきなり人に鉄パイプ投げつけておいて、謝罪の一言もねえのか、と言いたかったが、どうやら脳は活性化してくれないようだ。
俺はぼんやり、と虚ろな目で佐倉を見つめた。
額には薄らと汗をかいて、所々かすり傷のようなものがある。
佐倉は俺の金髪をひと撫ですると、ごめん、と遅い謝罪をした。
「でも、間に合って良かった」
息を盛大に吐き出し、佐倉はスーツのポケットから同じような小瓶を取り出し、その中に入っていた錠剤を俺の手に乗せた。
「これ、こっち。こっち飲んで」
「…………」
早く、はやく、ハヤク。
―――アカガオソッテクルマエニ。
俺に選択肢なんて残っていない。
手に乗せられた錠剤を口に放り込み、喉を伝って腹に落ちたのを確認した。
さっきの佐倉と同じように盛大に息を吐き出す。