散らないサクラ
「……あー……」
低く呻くように声をあげると、ゆっくりと頭の中の霧が晴れていく。
「……てめぇ、どういうことだ」
視線だけ佐倉に向けると、佐倉は眉を寄せ、切なそうに此方を見ている。
今までされた事のない表情だっただけに、俺の心臓は一瞬浮いた。
その顔に焦点を合わせすぎていたのか、佐倉が俺の頬に手を伸ばしていたことに気づかなかった。
佐倉の手が頬に当たると反射的に体が跳ねる。
冷たい手。
「良かった……、ホントに……」
心底安心したような、そんな声色と顔をされ、俺は問いただす気も失せる。
ただ、いったい何があったのかだけは把握したい。
佐倉に問おうと頬に置かれた手を握ったその時、
「総長! 本当にすみません! 俺、命(たま)とられる覚悟できてます……っ!」
コスモスの輩の一人が謝罪と共に部屋に飛び込んできた。
佐倉も俺もその輩に目線をやる。