散らないサクラ
状況が把握できてないのは俺だけのようだ。
佐倉はその輩に近づくと、すっと目を細めた。
そして大きく息を吸う。
「……お前が謝ってどうすんだ。他に責任とるやついるだろう」
輩の下げた頭を軽く叩くと、今度は呆れたように息を吐いた。
「秋羽、こいつから事情聞きなよ。あたし外にいるから」
背を向けたまま告げられた言葉に、俺は不穏なものを感じ背筋が冷たくなるのを感じた。
佐倉が部屋を出て、静寂が訪れる。
俺は床に転がってる薬を眺めて拾うと、机の上に置いた。
「これと、関係あんだろ」
コンコン、と2、3回机の表面を叩くとビクリ、輩の肩が揺れる。
次第にゆっくりと上がってきた顔は今にも泣き出しそうに歪んでいた。