散らないサクラ
「…………っ」
口を固く結び、焦るように左右上下に瞳を動かす。
「言えよ」
「…………っ」
「……言え」
地を這うような怒りの声を上げると輩の瞳が大きく揺れ、息を乱し始める。
それでもなお言おうとしない雰囲気に、机に置いた薬を掴み輩に投げつける。
粒が輩の顔にあたって歪み、陽気な音を立てて床に転がる。
「てめぇの耳、いらねぇよな。千切って床に捨ててやる」
ああ、ついでに口も千切ってやろうか。
ニタリ、と笑みを浮かべて腰を上げると輩の顔がさらに恐怖で歪む。
そして今度こそ口を開いた。
「そっ、それ……、この総長が飲もうとしてた薬……っ」
「…………」
「ま、麻薬なんです!」
「あ?」
「お、俺! ある人に頼まれてそ、総長の薬の中身を取り替えろって、そう言われて! ……ホントに、ホントにすいませんしたッ! 命(たま)取ってください!」
さっきと同じ光景の繰り返しだ。
輩が頭を下げ、俺は訳がわからないと眉を寄せる。