散らないサクラ
「総長、これ死んだんですか?」
「ポリ来る前にさっさと片付けようぜ」
「え! まじで死んでんの?」
今まで口を開かずに見物していた周りの輩が声をあげる。
塊を見下ろして、靴のつま先でつついている。
「よく見ろよ、腹上下してんだろ」
そう言って溜息をつき、拳についた赤色を服の端で荒く拭く。
液体は取れたものの、染み付いた色までは取れずに薄っすらと跡を残している。
不愉快極まりない。
「つうか、コイツも相当な馬鹿だよな。総長に喧嘩売るなんて」
「まだここらで“血塗りの獅子”に手出す奴がいたことに俺はびっくり」
「ぷっ、だな。頭イカれてんよ」
口々に言葉を発する輩達。
赤色に染まっている塊を移動させながら、余計な事まで話している。