散らないサクラ
いや、内容はぼんやりと理解できる。
こいつは誰かに頼まれて、俺の薬の中身を麻薬にすり替えた。
「ね、姐さんが来てくれなかったら……、っホントに……、ホントにっ」
ああ、だからあいつはあんなに血相を抱えて俺に鉄パイプを投げたのか。
にしても、鉄パイプはないだろう。
それが俺の顔面に当たっていたら血まみれもいいとこだ。
あの女の無茶苦茶加減に少し表情が和らぎつつも、神経は頭を下げ、震えている輩へと集中していた。
「……うるせぇよ、肝心なとこ抜かしてんじゃねぇよ。誰だよ、てめぇに頼んだ奴は」
俺の声の低さに輩は体を震わせた。
分かるのだろう、この声の低さが、頼んだ奴をどういう風にするのか、分かっているのだろう。
「俺の気がみじけぇ事しってんだろ。……吐かせられてぇのか」
一歩、一歩と頭を下げる輩へと近づく。