散らないサクラ


せっかく放り投げてやってチャンスを、てめえは自ら溝に捨てた。


ゲームオーバー。


俺は数メートルしか離れていない歩の元に飛び掛るようにして蹴りをいれる。

突然の襲撃にガードしきれず、歩はモロにそれをくらい後ろへ吹っ飛ぶ。



「……情けねぇな」



プッ、と床に唾を吐き出し尻餅をついている歩を見下して笑う。

それで歩の導火線にも火がついたようだ。

低い唸り声と共に立ち上がり、俺に襲い掛かる。



歩は強い、コスモスの腹心だ。

俺には少し及ばないにしても、手こずる相手には違いなかった。



「っ……、病気を知ってチャンスだと思った」



歩の右ストレートをかわし、揺れた瞳を見逃さない。

隙をついて腹に一撃を食らわす。



「ぐっぅッ! がっ、はっ!」



口から何らかの液体が吐き出され、その場に蹲る。

無様な姿を見下し鼻で笑う。



「……で? 俺の弱みを握ったとでも思ったか、屑が」

「っ……、っの余裕な、態度、も……、腹が立つんだよッ!!」



立ち上がった歩に不意をつかれ、顎下にアッパーを食らう。

脳がぐわん、と揺れるのを感じた。

数秒、チカチカと目の前が光る。




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