散らないサクラ
手加減なんて言葉をこういう輩に使うのが間違っている。
渾身の力は歩の腹にクリティカルヒットし、歩は息をする事を忘れ真後ろに倒れ込んだ。
「っ、は!」
「てめぇが佐倉のなにを知ってんだよ、あ?」
倒れ込んだ歩の腹に馬乗りのような形で覆いかぶさり、首元に手を伸ばす。
「―――っ! ぐっ、……ぁ、はっ」
両手を野太い首にかけ、ゆっくりと酸素を奪うのが分かるように体重をかける。
ああ、恐怖に歪みだす顔なんて他の輩となんも変わりゃしねえ。
だけど、苦しそうに歪んだその瞳の奥、見えたのは救済の光(助けを呼ぶの悲鳴)。
俺はそれを見なかった事にしてニタリ、と笑って見せた。
「俺の通り名、忘れたワケじゃねえよな? “血塗りの獅子”、……真っ赤にするまで標的を染め上げるから勝手に付けられた名前だ。……お前も、真っ赤にしてやるよ」
「っ、! ぅっ、……あ……、きィ……ッ!」
名前を呼ぶな、吐き気がする。
俺が投げてやったチャンスを棒に振ったてめえに、今更俺に許しを請う資格なんてねえんだよ。