散らないサクラ
自分を貶される言葉は好きじゃない、同時に賛美される言葉も好きじゃない。
輩たちから聞こえた賛美の言葉に、コンクリートに転がっている小石(尖っている物)を拾って投げつけようと腕を上げる。
「っと、秋。スットプ、だ。んな、かてぇ石投げたら死んじまう」
だが石を投げることが出来ず、月に照らされた男の手によって腕を掴まれてしまった。
「……手、離せ」
相手が離す前に掴まれた腕を振り下ろす。
男は乾いた笑いをすると、輩が片付けている塊に目をやった。
「荒れてんな。真っ赤にする必要ねえって言ってなかった?」
「うるせえ」
自分に突っかかってきた獲物をどうしようが勝手だ。
生かそうが殺そうが、自分次第。
殺したところで何も利益を生まない、警察に追い回されるだけの不利益だけ。
それさえなければ殺していた、それほど今日の俺は荒れていた。
それは事実だった。