散らないサクラ

* * * *


……表に出ると遅咲きの桜がはらはら、と華を散らしていた。

ああ、まただ。



「…………」



佐倉はその桜の幹に手をついて、愛おしそうに花びらを見上げる。

誇らしげに立つその佐倉も何故か凛として綺麗で、俺は吸い込まれるように近づいていく。



―――綺麗だ。



佐倉は近づいた俺に気づくと、優しく微笑んだ。

俺はいまどんな顔をしてるんだか分からねえ、たぶん、情けなかったんだと思う。



「秋羽」



優しい音。


「上に立つものは受け止めるんだ。それがどんなに自分に理不尽な結果だろうと、それを上に立つものが取り乱してたら恰好つかないだろ。……だけど、辛いよね」



佐倉はゆっくりと幹から手を離し、俺の頭部へ腕を伸ばした。

そのまま自分の胸へと引き寄せ、強くもない弱くもない力で包み込んだ。

俺は佐倉の肩口に顎を乗せる形になっていたが、拒否する事なんてなく、むしろ心地いい感覚さえ生まれていた。


暖かく、優しい。


痛んだ金髪を佐倉の細い指が梳いていく。



「さて、第二の我が家も失った秋羽くん。あたしの家に住む事にしようか」

「あ?」



突然の提案に先ほどの雰囲気はどこにいったやら、俺は眉間に皺を寄せ佐倉の顔を見た。


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