散らないサクラ
「アンタ、あたしに惚れてるって言ったけど、あたしはその想いに応えられない。アンタが勝手にあたしを想ってるだけならいい。でも、あたしは応えられない。それだけは分かって」
凛と張った背中がほんの少し、少しだけ小さく震えた。
それと比例するように俺の心臓が揺れて、それを隠すかのように俺は佐倉の肩口に頭を乗せた。
「極道って家紋背負ってるからか?」
「……実のところ、今は背負ってない。だからこうやって教師になってるんだし」
今度は佐倉が自嘲気味に笑った。
佐倉がこういう性格の所為か、教師と生徒と言う関係を忘れてしまう事が多々ある。
確かに“組を背負って掘った”と言って置きながら教師をやってるのに、家紋がどうとか、おかしな話だ。
俺は頭をそのままに小さく尋ねる。
「じゃあ、なんでだ」
想いを告げて、“はいそうですか、わたしもです”なんて言われたらそれこそ興醒めだった。
だが、惚れたと伝えて置いて、無理だからと言われてもそれこそ“はいそうですか、わかりました”なんて言えるはずがない。
初めて感じる想いに戸惑いつつも、俺はアンタを真剣に好きだと感じてる。
その想いを思いっきり否定された気がして、それこそ戸惑っていた。