散らないサクラ
すると、佐倉はすっと指をさした。
その指を辿ると、カウンターキッチンの端に写真立てが飾ってあり、顔をあげてそれを見る。
「……これ」
そこには佐倉ともう一人、幸せそうに笑った男が映っていた。
しかも二人とも白い衣装に身を包んでいる、そう結婚式の写真だった。
「結婚、してんの。ま、もう旦那さんいないんだけど」
幼い子供みたいに笑う佐倉。
バスタオルを拾うと、先ほどと同じように体に巻きつけた。
「バツイチか」
「世間一般ではそうなるのかねぇ」
「バツイチでも関係ねえよ。そんな理由で俺を男として見ねえ気か」
馬鹿にすんじゃねえよ、と此方を向かない佐倉の背中を睨みつける。
バツイチが障害になるって思ってんだったら、そんな壁俺がぶち壊してやる。
教師、生徒って言われたってあと1年先の事を考えればいいだけだ。
……つか、人を好きになるとこんなに見境がなくなるもんなのか。
俺は自分の中に沸いた出た想いに、自分自身驚いていた。