散らないサクラ

佐倉は声を出して笑う(失礼なやつだ)。



「ふぅ、めんどくさい事になったなぁ」

「あ? てめ」

「あのね、秋羽」



人の想いをめんどくさいで片付けられ、プチ、と脳みその線が切れた音を感じたが、佐倉が此方を振り向いたその顔が真剣だったから静かに衝動が消えていく。


あの時と、同じ、真っすぐ見据える強い瞳。




「セックスでもなんでも、体の関係ならいくらでもなってあげる。愛情やら恋しい気持ちやらを求めるなら、他をあたって。あたしはアンタにその気持ちを与えてやれない」




言葉を発することが出来ない。


コスモスのトップを飾っていたこの俺が、たった一人の女相手に、声も出せなかった。

呆気に取られたと言うのもあった。


想いに応えられないなら、体の関係なんてもっての外だと思っていたこの女の口から、簡単に単語が飛び出してきたことにも驚いた。


だが、セックスをする、イコール、想いには応えない、と言われている事ははっきりと分かった。





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