散らないサクラ
その姿をじっと目で追っていく。
俺の容姿からして部類は不良だって分かってるはずなのに、コイツはそこについて触れるでもなく驚く様子もなく。
「リョウ……さん、昔、どっか入ってたか?」
俺のさん付けに驚いたのか、一瞬目を開かすとリョウは此方を見た。
「あー、まあな。秋羽みたいなキンパ時代もあった」
はは、っと乾いた笑いをして懐かしいものでもみるような眼で見つめられる。
佐倉もたまにそういう目で俺を見る事がある。
でもけして不快感を与えるものではなく、よく説明は出来ないが嫌ではなかった。
同性と言う事もあり、年上ということもあって、全てを晒せないにしても俺とリョウはいい感じに打ち解けた。
そして佐倉のことについて経緯をぶちまけたら、リョウは遠い目をして小さく笑った。
「そっか、弥生をね」
「アイツ、自分から自分のことを話そうとしないタイプだろ」
「そうだな」
ご名答、そう言ってチューハイを呷る。
「……リョウさんが差し支えない程度でいい。アイツのこと、教えて欲しい」
恋は盲目?
上等じゃねえか、盲目になってやるよ。
てめえの心の中を少しでも知れるなら、俺は道化師にだってなってやる。
佐倉に向ける覚悟を瞳に宿し、リョウを見つめるとリョウは何回か瞬きを繰り返して、それから笑った。