散らないサクラ
その言葉を吐いてから数秒、リョウは煙草を灰皿に潰すと、前髪をかきあげて笑った。
「くくくっ、はは!」
「…………可笑しい事言ったか?」
「はっははは! はー……、いんや。悪い。イイ意味で面白いよ、秋」
眼光を光らせると、リョウは悪びれた様子もなかったが謝罪の言葉を発し、涙を拭いた。
そして落ち着かせるように一度大きく息を吐いた。
始終その様子を観察し、俺は顔を上げたリョウの目を見た。
「恋愛じゃねえけど、俺も弥生の事愛してっからさ。半端な覚悟だったらほっとこうと思ってたんだ。……でも、分かったよ。お前の覚悟、ちゃんと受け取った」
「…………」
なんだ、俺は試されたのか。
少し不快な気持になりながらも、見つめ返してきたリョウの瞳が真剣だったから、言葉を飲み込んだ。
それからリョウはまた煙草に火をつけ(ヘビースモーカーだ)、“昔話をするよ”と言った。
「弥生と俺は……、ちっせぇころからのダチ。ま、幼馴染ってやつだな。中学も高校も一緒。……中学3年から高校1年にかけて、弥生は手が付けられないほど荒れた」
一種の若気の至りだな、とリョウは笑う。