散らないサクラ
表情は柔らかいのに体が出ている威嚇するような激しいオーラに俺の肌の毛が逆立つのを感じた。
「再婚相手の子供、その子あたしと7歳しか年齢違わなかったの。7年間も母さんを騙し続けて、他で子供作って。……正直、殺してやろうかと思ったよ」
佐倉が中学3年、つまり15歳の時に、8歳の義弟ができたと言うわけだ。
未だに佐倉から放たれる殺気にゾクゾクとしたものを背中に感じながら耳を傾ける。
「そんで父親から出た言葉は“今日から疾風(はやて)を時期組長とする”って。あ、疾風ってのは弟の名前ね。ま、……勝手に背中に桜を彫ったのはあたし。でも、組を背負おうとしたからこそ、彫ったもの。それに今までのあの苦しかった教育はなんだったんだって、そりゃあもう怒り爆発よ。……それで不良少女、弥生ちゃんの出来あがり」
それが荒れた理由、リョウが止めようとしなかった、いや出来なかった理由。
佐倉がその時どんだけ辛かったのか、苦しかったのか。
その状況にいたことのない俺には分からない。
だが揺らぐことのない佐倉の瞳がそれが佐倉にとってどれだけ大きい事なのかを語っているように思えた。
先ほどまでの殺気あふれた空気が薄くなっていくのを感じながら、俺はまだ佐倉を目で追っていた。
話はまだ終わってない。
「あん時は酷かったよなぁ。ま、俺も意外と楽しんでたけど」
「イライラ発散させる方法って言えばそれしかなかったでしょう? ああ、ごめん秋羽」
懐かしい話に花を咲かせようしたが、佐倉が俺に気づき苦笑いをする。