散らないサクラ
* * * *
廃棄されて煤だらけの古い修理工場の休憩所が、俺達の根城。
割れた窓ガラスにはガムテープを、壊れた扉には木材を貼り付けてある。
見栄えは悪くとも、寒さや暑さをしのげるならそれでいい。
そこまで綺麗な場所なんて望んでいない。
それにここはなんでもある、有難いことに電気やガスが使えるし、更には風呂までついてる(もともと誰かが住んでいたんだろうが)。
俺にとってまさに城。
「秋、今日からガッコ始まったんじゃん?」
昨日の塊の赤色が消えない。
俺は洗面台にへばりついて荒く拳を擦っていた。
「あーき! 聞いてんの?」
「うるせえ、忙しいんだよ。見て分かんねえの?」
後ろでピーチク言ってる男を見ずにひたすら手を擦った。
分かっていた、この赤色が消えない理由なんて。
染み付いた色が消えないのなんて分かってた。
何度も、何度も繰り返しついた色だから。