散らないサクラ
「夜に繁華街ぶらついて突っかかってくるヤツと喧嘩ばっかしてたら、いつの間にか“族潰し”って呼ばれるようになってさ。そんなつもりなかったんだけどね」
「……クラッシャー、か」
俺の呟きに佐倉は笑った。
俺たちの間で族を潰しまわる奴の事をクラッシャーと呼ぶ。
チームを作って大規模になる奴らもいるし、桁外れた強い奴が一人で潰す奴もいる。
たぶん、佐倉は後者だろう。
「最初はね、リョウとあたしで適当に暴れてたんだけど、それこそまたいつの間にか周りには大勢の仲間ができちゃってね」
「弥生に倒された奴らが勝手に配下についてただけだろう」
「あー、そうとも言うね。結局収まりつかなくなってさ、秋羽みたいにチームも作ったの。結構大きい規模になったっけね?」
佐倉がリョウに視線をやるとリョウは微笑んで一度だけ頷いた。
懐かしむようにして俺を見ていた理由がここにあったワケだ。
佐倉とリョウは昔の自分と重ねて俺を見ていたんだろう、それは卑下するわけでもなく可哀そうに思うでもなく。
ただ、あの頃の自身と重ねて懐かしく思い、あの頃の記憶が脳の片隅で光っていたのだろう。
二人はあの頃の事を嫌な事だとは思っていない、恥だとも思っていない。
だから、俺も嫌な気持ちにはならなかったが、この二人にもそんな時代があったのかと思うと複雑な気持ちになった。