散らないサクラ

……なあ、佐倉。

アンタの目がその人以外映してないみたいに沈んだ色をしてるの、気づいてないだろ?


リョウはもう何度も見てきて見慣れているから反応も普通だったけど、俺は違う。


アンタのその目に、俺は苛立ちすら生まれていた。

ああ、醜い嫉妬の塊がずしん、と腹の真ん中に降りて、俺は動けない。



「……ま、あたしの話は以上! なんて言うか、秋羽。アンタ怒るかもしれないけどさ、アンタは昔のあたしにそっくりなの。秋羽見ててさ、そう思った。これだけは言っておく。秋羽をなんとかしてあげたいなんて偽善な気持ちでアンタを部屋にあげたわけじゃない」



俺の家だけどな、と言ったリョウを見ず佐倉は続ける。



「あたしが竜みたいに救える力を持ってないことも知ってる。そんなに神みたいな存在になろうとしてるわけじゃない。……あたしは、あたしがアンタのはけ口になれればいいって、そう思ってるだけ。だから、学校に来る必要もない。何をしてても、構わない」



色を戻した瞳が俺を捉え、熱く光る。

真剣なその瞳に見据えられ、俺の背中の毛がゾクリと逆立つのを感じた。



「だけどね、秋羽」



真剣を帯びた声なのに、顔はふんわりと優しく変化する。

その度俺の心は、情けもなく同じように変化する。



「帰れる家があるって事、忘れないで」



---ああ、やっぱ綺麗だよ、てめぇは。







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