散らないサクラ
凛と立って、……桜みてぇだ。
毎年毎年、春になれば自分の命と呼べる華を散らし、それでもなお凛と立ち続ける桜。
人を楽しませるわけでもなく、だたそこに存在感を残す。
散る事を恐れない、桜。
いつか……、てめぇのその瞳の中に恥じなく移れるような男になりたいと、俺はその時ガラにもなく思った。
何故か最後の佐倉の言葉に、俺の中に今まであったモヤモヤとか嫉妬の塊とか、全部体の中から消えていた。
「ああ、わかった」
出た声はやけにすっきりしていた。
その声に佐倉が頬笑み、リョウが以外そうに眼を丸くした。
手に持ったチューハイを呷り、自分の喉が意外と乾いてる事に気がついた。
そこまで集中して佐倉の話を聞いてたのかよ。
自分をあざ笑うように鼻から息を吐く。
「じゃ、好きにさせてもらうわ」
ニッ、と笑って佐倉を見ると、佐倉は嬉しそうに笑った。
それから俺のほうに近づいてきて、ぐしゃぐしゃと金髪を掻き交ぜる。
ぼっさりとしたその髪の毛を見てリョウが笑い、俺が歪んだ顔を見せる。
それに佐倉が声を出して笑って、……俺も、ふっと笑う。
ああ、悪くねえな、こんな時間も。