散らないサクラ

あの時と同じ……、歩の口から佐倉の言葉がでた時と同じ。

体は説明のつかないものに支配され、感情というコントローラーを手放す。


最後に見たのは見開いた番犬の顔だった。



―――ゴスッ!!



骨にまで響いたような音が耳に届き、目に映るのは背中から倒れ込む男の姿。

渾身の力の所為か、じんじんと拳が痛む。

辛うじて尻で体を支え、上半身を起こした番犬を俺はウジ虫をみるような眼で見下した。

番犬が俺の足元目掛けて血を吐きだす。



「……っ……、あは、ホントのこと言われてキレたの?」



見上げられたその目に笑みはない。

俺は鋭い眼光で此方をみるそいつを見下し、笑って見せる。



「ちげぇよ。あいつが猫だったら、てめぇはその猫の親に殺される鼠だって証明してやっただけだ」

「……屑が」



番犬の顔が歪む。


猫だと思って手を出して、その親も猫だと思っていたんだろうが、違う事を思い知れよ。

てめえが手をだした猫の親は猫じゃねえ。



――――獅子だ。




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