散らないサクラ
足に重力を置いた番犬が軽快に立ちあがり、口元を拳で拭く。
それからは早かった、倒れ込んだその距離から飛びかかるようにして向かってくると、足場を崩させようと足を伸ばす。
だが、それを俺はそれを回避し、番犬が舌打ちをする。
お互いに頭の狂ったスイッチが入り、そこからは敢えて避ける事をせず、殴っては殴り返し。
どちらかが先に倒れるかの勝負だった。
いつも通りなら勝ち負けにこだわったりはしねえ。
勿論、勝前提で勝負を挑むが、今日だけは“負け”られねえ。
俺と番犬の一対一(さし)だろうが、んなこったどうでもいい。
形はそうであれ、俺は歩、そしてコスモスの輩の思いを背負っている。
自分でもそんな風に考えるなんて臭いと思った(実は取り肌も立っている)。
だが、佐倉に会ってあいつに触れてこうせずにいられない自分に気付いた。
今の俺も悪くねえんじゃねえか、なんて錯覚かもしれねえが、そう思う自分がいた。
それに、歩に泣かれてまでして、俺が動かねえワケがねえ。
……強くなりたい、あいつみたいに。
……何かを守れるくらい、強くなりたい。
その思いが俺を駆り立てる。