散らないサクラ
* * * *
「は、……ゲハッ……、うっ……、はぁ、右、イカレたね?」
「は、はっ、は、ぺっ……。てめ、も左、イッてんだろ?」
どれくらい殴り合ったのか、時間の感覚が分からない。
気づけば0時を過ぎた頃から始めた喧嘩は朝日が昇るまで続いていた。
言葉通り、俺の右手は震えだし、もうあと一発も殴れるか分からない。
同じように番犬の左手も状況は似たようなものだろう。
顔は至る所は真っ赤、眉横にはでかい青痣。
口の端は切れまくって腫れてタラコになりかけてる。
「……げふっ、あー、痛い」
口から大量の血を吐きだすと、番犬は壁に背中を預けた。
俺も額から流れた血を拭い、壁に背中を預ける。
暗黙のルールとして朝日が昇ったら全ての勝負事は終わりを告げる。
勝敗が決まらなかった喧嘩はどんなことがあろうと、そこまで、結果は引き分け。
そしてそれが今の状況。
「あーあ、最悪。明日会う女の子ビックリしちゃうじゃん……、ッいてて」
はあ、とわざとらしいため息をついて見せた番犬。
もうお互いに戦気もなく、気力もない。