散らないサクラ

ぷっ、と噴き出したように笑う顔をじっと見つめ怒鳴りたい気持ちを押さえて手に圧力を込める。



「ちげえ。……大胆で鮮やかで、散ってしまう事を恐れもせず、凛とそこに立つ桜見て、てめぇみてぇだって思ったんだ」

「…………」



自分でも恥ずかしい事を言ってると思ってる、それは分かってる(腕に取り肌が立っている)。

でも、口から零れ出た言葉に嘘偽りはなく、全てが真実だと言える。

綺麗で凛として、愛でられ、かといって決して自分に溺れず。

そこにいるだけで存在感をありありと見せつけられる、そんなアンタが、……俺は。



佐倉は俺が真剣だと気付いたのだろう、笑みをサッと消すと同じように俺の瞳を真剣に見返してきた(こういう所も愛しいと思うあたり、末期だ)。

ぎゅ、と口元に力を入れると激痛が走り、口端からつーっと血が流れ出した。



「佐倉、俺はアンタみたいになりてぇ」



アンタみたいに、なりたい。

逃げずに受け止められる強さを、誰かの支えとなれる強さを、自分から逃げ出さない強さを、俺は欲しい。



「アンタみたいな、桜に俺はなりてぇ」



凛と胸を張って、この太陽の下で堂々と歩けるような、そんな桜になりてぇ。




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