散らないサクラ
俺は少々イラつきながらも答えを求め、佐倉を見る。
「分かんないの? 馬鹿」
「あ?」
「コスモスだよ、コスモス」
“コスモス”、それは俺がトップを飾る族の名前。
それが分かっちゃいるが、イマイチピンとこない。
首を傾げた俺に佐倉は再び子供のような笑みを浮かべて言った。
「秋の桜、そう書いて秋桜(コスモス)って読むんだよ」
やけに透き通った佐倉の声が、脳天から心臓、そして股間へと抜けていく。
体に浸透する変なもの。
ストン、と簡単に心臓の真ん中に落ちたかと思うとそれは体に巡り脳みそを熱くし、それが至る所に伝わっていく。
は、なんだこの感覚。
初めての感覚なのに、暖かくそう、“満たされる”。
「秋桜……、コスモス」
秋の桜、コスモス。
復唱するように言うと頬に当てられている佐倉の両手にやんわりと力が入った。