散らないサクラ
俺は初めて珍しいものをみるようなガギみたいな顔をして佐倉の顔をみていたのだと思う。
だが、今の俺にはリアクションを上手く取れる余裕なんてなかった。
「……秋羽、アンタの桜だよ。アンタはあそこで、秋桜で立派な桜を咲かせている」
馬鹿じゃねえの、と笑い飛ばすことさえできねえ。
ただ何故かそれがいとも簡単に受け入れてしまった自分に驚くばかり。
「俺の、桜。……俺は……」
……俺は、てめぇのようにあそこを、コスモスを守れていたのだろうか。
アンタみてぇに堂々と胸を張れていたのだろうか。
逃げから始まって出来たあの場所で……、俺は自分のプライドさえ守れていたのか?
柄になく揺れた感情が顔に出た。
不安そうに眉を寄せた顔を、佐倉は見つめ、そして舞い散る桜のように優しく微笑んだ。
「秋羽。なんの為に此処にきたの? 誰のため? ……何を守りにきたの?」
「……俺は」
何を?
「アンタは此処にアンタの世界を守りにきたんだよ。そしてコスモスの皆の誇りを守りに来た。アンタを信頼してくれている仲間の為に、アンタは此処にきた」
「…………」
「立派だよ、アンタの桜も。綺麗にしゃんとして、コスモスのテッペンで堂々と咲き誇ってる。……十分、何かを守ってるよ、秋羽」
心臓が音を立てて波を打った。