散らないサクラ
「もちろん、そんなん出席しねえっすよ」
「お前らも悪だねぇ」
派手な笑い声が部屋を包んだ。
歩はフレンドリーな性格の所為か、懐く輩が多い。
いっその事、俺よりもこいつが総長に就いたほうがいいんじゃねえか、と思う時も多々ある。
俺はこれ以上取れない赤に落胆しながらも、蛇口を閉め手を振り回して水を切る。
そしてソファに腰を下ろす。
「秋、お前今年っこそ高校3年を卒業しろ、な?」
「……うるせぇ」
覗き込む歩の顔が本気で心配しているのが分かる。
今年で高校3年をやるのは3回目。
理由は停学やら、自主停学やらで出席日数が足りなくて留年。
「代わりにお前が俺の高校を卒業しろよ」
そう言うと歩が鼻で笑う。
「馬鹿言うなって。俺はちゃんと通って18歳で高校を卒業したっつの」
「っせ」
「俺もお前も、今年で20歳になんだからさ。ちったぁ、先の事も考えとけ? いつまでも高校生やってらんねえよ?」
机の上に置いてあるミネラルウォーターを口に含みながら、苦笑いする歩を横目に見た。