散らないサクラ
「……礼なんて言ったらたぶん、また殴られるだろうから言わねえ。でも」
歩はそこで言葉を切ると一度また顔を痛みでしかめた。
その後に深々と頭をさげられ、俺の思考はまた回路がめちゃめちゃになる(なんなんだこいつ等)。
「コスモスのトップが、アンタで秋羽で良かったって、俺はいますげぇ実感してる。思ってる」
心臓が酷く重たくなった。
まるで今までそこになかったんじゃねえかと思うほど、ずしり、と重さを残す。
ドクドクドク、うるせえよ、少し黙れ。
こいつの声が上手く聞こえねえだろうが。
「感謝、してる。……俺たちに居場所をくれて、俺たちに大事な仲間を作らせてくれて……、ホント、ありがとう」
体中に流れた歩の言葉に、俺の体は完璧に動く能力を失った。
もともと殴り合って脱力してた体で今は指一個動かす自信もねえ。
――――……十分、何かを守ってるよ、秋羽。
佐倉の声が心臓裏で響く。