散らないサクラ



「……礼なんて言ったらたぶん、また殴られるだろうから言わねえ。でも」



歩はそこで言葉を切ると一度また顔を痛みでしかめた。

その後に深々と頭をさげられ、俺の思考はまた回路がめちゃめちゃになる(なんなんだこいつ等)。



「コスモスのトップが、アンタで秋羽で良かったって、俺はいますげぇ実感してる。思ってる」



心臓が酷く重たくなった。

まるで今までそこになかったんじゃねえかと思うほど、ずしり、と重さを残す。


ドクドクドク、うるせえよ、少し黙れ。

こいつの声が上手く聞こえねえだろうが。



「感謝、してる。……俺たちに居場所をくれて、俺たちに大事な仲間を作らせてくれて……、ホント、ありがとう」



体中に流れた歩の言葉に、俺の体は完璧に動く能力を失った。

もともと殴り合って脱力してた体で今は指一個動かす自信もねえ。



――――……十分、何かを守ってるよ、秋羽。



佐倉の声が心臓裏で響く。




< 92 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop