散らないサクラ
俺は、俺は……、守っていた?
感謝されるほど、守っていた?
……守って、いた。
ちっぽけで、母親と逝く事を許されず、親父に対しての憎悪を膨らまし。
それでいて自分をつき通すだけつき通して来た俺が。
お前らを……、コスモス(秋桜)を守って来た?
「……俺は、てめえらの為に動いたこと、あったか?」
薄く開いた口から零れた言葉の震えに気づくんじゃねえぞ。
歩はゆっくりと顔をあげ、涙の膜を張った瞳で俺を見た。
「秋は自分の為に動いていたつもりだったかも知れねえ。でも、その行動の結果は全て俺たちを救うことに繋がる。……いつも、いつもてめえに助けられてばっかよ」
潤んだ瞳が三日月に変わる。
ハッ、馬鹿みてぇに笑うんじゃねえよ。
なあ、佐倉。
俺はやっぱアンタみてえになりたい。
強くて、かといって溺れず、凛としてそこに立つだけで綺麗だと思う人間になりてえ。
俺はかつてコイツの笑顔をみて嬉しいと思った事があっただろうか。
……ない、と断言できる。
他人の事なんかに興味を示さずただひたすら、赤の呪縛から逃れようと必死だった。
誰が笑おうが、誰が泣こうが、誰が死のうが。
俺には関係のない事。
でも、今ならはっきりと言える。
「……歩、コスモスのトップになってお前らといる俺自身を誇りに思うよ」
細めて笑った瞳に朝日が染みて少し、涙が出た。
そして俺は、一つの決心した。