散らないサクラ
「ここを守って来たつもりなんてなんもねえって、ずっと思ってきた」
誰かが反論するまえに、だけど、と付け加える。
壊すだけ、そうクラッシャーのようにただそこにあった赤色の道を切り裂いて来ただけだと。
逃げて、逃げて、逃げ続けて此処に居たと思ってた。
「それを覆した人間がいた。ガキみてえで、よく笑って、失礼なやつで、男みてえな女。そんな女が、その思いを覆した」
「……佐倉さんか」
歩が何かを悟ったようにポツリと呟いた。
そう、佐倉。
アイツが俺の世界を変えた。
「そんな女が俺は好きだ。……ムカツクほど強え女を、俺は好きになった」
噛みついても噛みついても、歯形すら残せねえような女だ。
「俺はソイツを守りたい。佐倉とコスモスを守るような力は俺にはねえ。……だから、俺はコスモスを捨てる」
はっきりと告げた言葉に、今度は誰一人言葉を発しなかった。
静寂に包まれたこの部屋にあるのは一種の緊張。
誰かの鼓動が聞こえてくんじゃねえか、と思うほどの静けさは一人一人の緊張から出来あがったものだった。
発したら何か終わる、誰かが認めちまったら、それに賛成せざるを得ない。