散らないサクラ
向かってくるなんの力のない拳を俺は受け止め、代わりに渾身の一撃を歩の腹にお見舞いした。
痛めつけられた体は俺の衝撃に耐えきれず、その場に膝をつき、嘔吐した。
「汚ねえ野郎だ、って思った」
「ははっ、ひでえ」
歩は乾いた笑い声をあげると、立ち上がった。
俺もその後に続く。
「その後に言った秋の言葉が、今の俺に繋がってんだ。忘れねえ」
そう告げた歩の瞳にさっきまでなかった光が宿っていた。
「“拒絶を貫き通す強さもねえやつが、簡単にんな顔してんなよ。胸糞悪い”、って秋、お前は言った」
「……ああ、覚えてる」
「あん時の俺は、誰も彼も否定して、でも心のどっかでいつか誰か俺を救ってくれる、なんて甘い考えを持ってた。それが秋の言葉で全部パァ! ……最初っから否定なんてしてなかったんだ。それを気づかせてくれたが秋、てめぇだった」
あの日から俺と歩は繁華街でちょくちょく喧嘩するようになり、それから一緒に行動することが多くなった。
……それがコスモスの始まりだった。