人形選択
 
 仮面少女が中へ入ると、俺も慌ててその後に続く。
 大きな音を立てて扉が閉まると、急に明かりがついた。
 暗くてよく見えなかった部屋の中が、一瞬にして明るくなる。


「っ……!」


 俺は、思わず息をのんだ。
 明るく照らされた部屋には大きな檻があって、その中には何十人もの女の子がいた。
 どの女の子も仮面少女と似たドレスを着ているが、顔や髪型、容姿などはみんな異なっていた。
 部屋に入ってきた俺と仮面少女には目もくれず、何十人もの少女達はペチャクチャとお喋りをしている。
 何だか、俺のクラスにいる女子達とあまり変わらない。
 違うところといえば、みんながみんな、端正な顔立ちだというところぐらいだ。


「皆様、新しいご主人様がやって参りました」


 静かに仮面少女がそう言うと少女達はぴたり、とお喋りを止めた。
 つーか新しいご主人様ってもしかしなくても……俺?
 何だか居心地が悪いな。


「今からあなた達の中からご主人様がドールを選びます。 響様、どうぞ」
「え、いや、どうぞって言われても……」


 檻の中の少女達の視線が、いっきに俺へと向けられた。
 気のせいか、全員の眼がキラキラと輝いてみえる。
 ……そういえばこの子達は人形なんだっけ。
 みんな人間みたいだけど、どういう造りしてんだ?
 俺は少女達を見渡す。
 みんな童話に出てくるお姫様の様で、綺麗で可愛くて……何だか選びにくい。
 仮面少女に選べ、と言われたが選べる気がしない。
 大体俺はドールセレクションが何なのか気になってここに来たわけで、ドールを選んでご主人様になる為に来たわけじゃないのにな……。
 仮面少女にそれを伝えてみるか?
 でもなぜか怖い。
 こんなに沢山の女の子達(ドールだけど)の前で泣きたくないけど、半泣き一歩手前だ。
 どうにか選ぼうと再び少女達に眼を向けると、ふと一人の女の子に眼が止まった。
 長い銀髪、白い肌、透き通った蒼い瞳。
 少女達の中で飛び抜けて綺麗で、違う雰囲気を纏っている様に見えた。
 
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