人形選択
 
 何より他の少女達と違うところは、俺の方を見ていない。
 確かに真っ直ぐこちらに顔を向けてはいるのだが、視線はどこをみているのか分からない。
 でも凄く、そう、三日前に手紙を貰った時の様に胸が酷くざわついた。
 気付いたら俺は、


「……あの子を、」


 ドールに下さい。









「では、お気をつけてお帰り下さいませ。 ドールの服や必要な物などは響様のご自宅へ送らせて頂きますので……」
「は、はい」
「それでは08、元気に暮らすのですよ」
「了解……」


 仮面少女が俺達にお辞儀をすると、洋館の玄関扉は閉まった。
 俺達、か。
 ちらっ、と隣にいる少女へ眼を向ける。
 歳はそう変わらないだろう、何となく。
 つーか、何で俺はこの子を選んだんだ?
 誰も選ぶ気は無かったのに、眼に止まった所為で俺はこの子のご主人様になってしまった。
 しかも家に連れて帰らなくてはいけないらしい。
 再びちらっ、と少女を見る。
 檻の中で見た時と変わらない、長い銀髪、白い肌、蒼い瞳。
 本当のお姫様の様に綺麗。
 っと、急にこっち見てきた。


「……どうかした?」
「いえ……何でも……」
「あっそ……」


 俺、この子と仲良くやっていけるのかな……。
 とりあえず、帰ろう。
 ……こんなドレス姿で容姿端麗な子と一緒に電車なんか乗ったら、絶対注目されるな。 はぁ









「やっと……着いた」


 電車で二時間揺られて(勿論注目の的だった)、駅から家まで三十分歩いて(近所の人には変な目で見られた)やっと俺は我が家に帰り着いた。
 ドールを連れて。
 俺が鍵を開けて家の中に入ろうとすると、少女も大人しくついてくる。
 何かひよこみたいで可愛いかもしれない。
 まぁそんなことはさておき、家の中に入る。
 真っ先にリビングへと向かい、向かい合うような形で少女をソファに座らせた。
 洋館を出る前、仮面少女に“家に戻られましたら、08とゆっくりお話し下さい”と言われたからだ。
 
< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop