ユビサキからあなたへ
「洋介!」



恵の声がした。



涙でぐしゃぐしゃの顔で振り返ると、恵はさっきの位置に立ちつくしている。

顔までは見えない。



でも声で泣いているのはわかった。









「洋介!…今まで、ありがとう!あたし、幸せだった!!」



恵が叫んだ。





言葉にならない何かがこみあげてきて、耐えきれそうにない。

今にも音をたてて崩れ落ちてしまいそうだ。



それでも俺は、足を踏ん張った。









「恵!今までありがとう!俺も、お前に負けないくらい幸せだった!!」



精一杯の叫びで返した。

たくさんの涙と一緒に。
< 80 / 232 >

この作品をシェア

pagetop