未来から来たころしやさん

7.She is a great man

どこまで走っただろうか?どれくらい走っただろうか?かなりの距離を走っているはずなのに、僕よりも小さい身体なのに彼女は息を荒げていない。おかしい、と思った。僕でさえも息が上がっているのに、彼女は息が上がっていない。何かが変だ。そう思った時、彼女の手が離れた
「此所まで来れば、問題無いだろう」
そう言う彼女は、やはり息が上がっていなかった。僕は荒くなった息を整えず、彼女に訊いた
「君は、一体、何者、なの?」
へたり込んだまま尋ねたので、彼女は僕を見下ろして口を開いた
「お前には、名乗らなければならない。それが、命だからな」
彼女は腕組みをして、僕を見下ろした。何か知らないが、逆らえない雰囲気があった
「だがその前に、立て。男が女を見上げるとは、情けない」
溜め息混じりにそう言われた。そう言われて僕は、慌てて立ち上がった。息ももう、大分よくなってきていた
「で、「誰だ?」という問いだったな。俺は、土方。土方歳三だ」
土方……歳三?聞いた事のある名に、僕は戸惑った。土方歳三と言えば、江戸時代後期――つまりは幕末と呼ばれる時期に、新撰組の「鬼の副長」として、敵味方関係無く恐れられた偉人である。それがどうして、僕の目の前に………?まさか、冗談を言っているのではないか?とも思ったが、対面する少女の表情はいたく真面目で、嘘を言っているような表情はしていない
「俺は未来で復活させられ、過去…つまりはお前のいる時代に飛ばされた」
「………え?」
彼女――土方歳三は溜め息を付くと、
「この際、その間抜け面だけは許してやる。だが、真面目に聞け。この話は、今後のお前の未来に大きく関わってくるだろう」
彼女はそう言うと、腰に差してある刀の柄に両手を置いた
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