HEART
プロローグ
あたしは、不思議な事に生まれたときから感情という物を顔に出せなかった。泣くことも、笑うことも知らない。
―…あたしの何かが麻痺していた。
「お前、冷たいな」
幼い頃に幼なじみの男の子に言われたその言葉は今でも凍てついて心を刺す。
何もかも、それ以来信じなかった。愛そうとしなかった。
“恐い”と君に、打ち明けたら
「…涙が感情を持てないのは、きっと産まれたときに大変な思いしたからだと思う。心配すんな…俺がちゃんとお前に教えてやるよ」
幼い頃とは違う、とても優しい声で言い抱きしめてくれた。
今ならあの時の君の言葉が分かる。
君が最期にあたしを抱きしめてくれた時の体温は今でも、あたしの心を締め付けます。