HEART
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家に辿り着くと、合い鍵でこっそり二階に行き自分の部屋へと向かう。
「荷物、そんな無いかぁ」
気付かれない内に急いで荷物を取り出しているとふと引き出しから見覚えのある写真が出て来た。
父を失った頃のあたしを、拾ってくれた時に2人で撮った2ショット。聖斗はとびきりの笑顔なのにあたしは笑ってない。
ギュッと唇を噛み締めると写真を引き出しに入れ、荷物を持ち聖斗の部屋へと入った。
「…せ―いと」
小さな声で名前を呼ぶと寝返りをうつ。こんな昔からの君の仕草が、とてつもなくあたしは好きだった。
優しいとこ、抱き締めてくれるとこ。数えても数えきれないくらい聖斗の好きなとこはいっぱいある。
「ねぇ、聖斗…何であたし笑えないのかな?どうして聖斗の側には居られないのかな…ねぇあたし、大好きだよ。聖斗が…サヨナラ。ありがとう」
立ち上がって部屋を出て行こうとしたその時、急に聖斗が寝言だったのか"行くなよ"と呟いた。
まるであたしがもう二度とここに戻って来ないという事を知ってるかの様に…
「…っ離れたくない」
心が自分の心じゃ無くなったみたいにズキズキ痛む。…それがあたしの唯一の本音だったのかもしれない。
聖斗の手を軽く握り、目を閉じると急に眠気に誘われてそのまま深い眠りに墜ちていった。