HEART
最初は、あたしがこの家に養子になってたとは知らなかった。だからこの思いが過ちという事すらも忘れてた。
ただあたし達は幼なじみでしかないと思ってたんだね。
まだ幼いとはいえ全ての現実を知ってたあたしを叔母さんは救いたかったのだろうか?
「叔母さんは、何時でも出て行きたくなったら出て行けば良いと言った。だからあたしは出て行く」
義理の家族というものにあたしを縛らない為に。必死でその事実を隠してきたんだろうね。
「…なら、せめて涙が他に好きな奴が出来るまで此処に居ろよ。じゃないと諦めきれないっ…」
涙が落ちる感覚が短くなる。手の甲はもう雨に打たれたかのように濡れてしまっていた。
「わかった」
この瞬間にあたしは本当に聖斗への思いを終わらせた。…そして、聖斗を傷つけた事で運命が変わるとは思わなかった。
もし聖斗を好きにならなかったらきっと、彼を傷つける事も無かったから―。