HEART
第1章 幼なじみ

雪景色

冬休みの間、あたしはずっと九州の親戚の家に行っていた。

そして今、帰りの飛行機が着いた所。

「―…涙、お帰り」

トーンの低い声が聞こえる。視界に映るのは見慣れた顔の君。

「名前呼ばないでよ」

…大好きな、君が笑ってくれても。あたしの心は“嬉しい”と感じない。

それにあたしは自分に不釣り合いな名前が大嫌いだった。

“涙”その名前の通り、意味は涙。…何故こんな名前になったかというと、原因は自分にある。

あたしが居たために、お母さんは亡くなってしまったから。

それで憎しみの行き場が無い父親はあたしを恨み、たくさん泣けばいいという意味でつけたらしい。

それが逆に泣けない子になってしまったのだ。

…でも、その父親すらも今は居ない。

天涯孤独になったあたしは今、幼なじみの聖斗の家で暮らしている。

「帰ろう?家に」

「うん…」

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