HEART
…夢を、見てた。長い長い暗闇を進んでゆく夢。そこに居たのはお父さんとお母さん。
『置いてかないで―…』
必死に泣きながらあたしは両親にすがりつく。そして、冷たい目でそれを振り払われこう両親は言った。
『あんた何て、要らなかったのに』
本気で。あたしを憎んでいる目だった。
あたしのせいでお母さんも、お父さんも死んでしまった。
『なら、あたし消えるから…お願い。一度だけでもあたしを見て…』
あたしが消えれば。あたしが消えることで2人が戻って来るのなら、と思った。
カッターを自分の手首に当てる。
『…バイバイ』
薄れてゆくあたしの意識の中でニッコリと2人は微笑んでいた。最後まで、両親はあたしを見なかった。
それは今はもう、消えてしまった傷。
あたしがあたしとして生きた最後の記憶。その夢は不思議と両親を失った時のあたしと瓜二つだった。
当時小2だったあたしにはそれがどういうものだったのかは知らない。