HEART

溜め息をついた先輩に、ふとあたしは手を離す。…まだ手に先輩の温もりが残っていた。

「どうしたん?」

残酷にあたしの心を容赦なく先輩は突き刺してくる。まるで全て見透かされてるみたいに…。

男にしては女みたいに綺麗な顔立ち。大人気の芸能人―。その人が今、あたしの目の前に居る。

分かってる。このままだときっと、

先輩を好きになってしまうということ。想いが届くはず無いという事。

「俺、これから撮影だけど…来る?」

あたしが答えるより先に水月先輩はもう走り出していた。

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