HEART
目の前でケーキを口いっぱい頬張っている友達に対し、正直うんざりしていた。
でもあたしは感情が顔に出ないから、気付かれる訳も無く。…ってかさっきの顔色悪いとかいうのもウソだ。絶対。
どんなに具合悪くても気付かれた事なんか一度も無いもん…。
「ん?涙食べないの?」
口の中にまだケーキを頬張ったまま友達は喋っていた。汚いなぁ。せめて食い終わってから喋って欲しい。
「口!口!子供じゃ無いんだから」
「ふぁ?そっか」
慌ててハンカチを取り出して口を拭くと、紅茶を一口飲んで急に真剣な表情であたしを見てくる。
「…どうして笑わないの」
さっきの声とは違う…寂しそうな声。笑わないんじゃない、笑えないのに…どうして?
「笑えないから」
気がついた様に目を大きく見開いてまたあたしに友達はこう言った。
「笑えないのは、何で」
それ以上何も答えられなかった。ただただ店内の「いらっしゃいませ―」とかいう声や「有難うございました」という声が聞こえるだけで。
…あたしが、笑えないのはきっと両親のせいだとわかっては居たけど別に憎むつもりも無かったから言えなかった。
感情を出せないのは、感情が無いから。だから私は「悲しみ」の意味すらも知らない……。