偽りの結婚
食事を終わらせ、部屋に戻ってもやはりラルフは帰っていなかった。
しかし、それを気にするでもなくベッドに放ったままだった本を取り上げる。
「さて、続きを読みましょう」
ベッドに横になりながら、書庫で読み終わらなかった本を読み始める。
数時間後――――――
数冊目の本を読み終えたところで、寝室のドアがキー…と遠慮がちに開く。
入ってきたのはもう言うまでもない。
「あれ?まだ起きていたのかい?」
部屋の扉を後ろ手で閉め、驚いた表情でこちらを見るのはこの部屋の主。
ラルフは夜中の2時を回った時計を見上げる。
「お帰りが早いんですね。今日も帰ってこないのかと思っていました」
「まさか…僕はいつもここへ帰ってきているよ」
皮肉たっぷりに言った言葉に対する答えは、驚くべきものだった。
「え…だって、朝はほとんどいないじゃない」
「それは君が朝寝坊をしているからだろう?僕は朝が早いんだ」
朝が遅いと言われたことにムッとしながらも、確かに王宮に来てから朝が遅くなったことを自覚していた。
多分、今までの生活の何から何までガラッと変化したため、体もついていけず疲労がたまっているのだろう。