偽りの結婚
令嬢たちの嫉妬
王宮の生活に慣れ始めたある日――――――
珍しくラルフから自身の書斎に来るように言われた。
ここへ来た時から一度もラルフに呼ばれたことなんてなかったわ。
大きな国事もないはずだし、いったい何の用なのかしら……
相変わらずラルフの外出が減ることはなく、会うのは食事の席か深夜の寝室のみだったのに。
―――コン、コンッ…
「シェイリーンです」
「入って」
数回のノックの後、ラルフの許可を得て書斎へと足を踏み出す。
書斎の奥で何らかの書類に目を落としていたラルフが顔を上げる。
「あぁ、シェイリーン、こんなところへ呼び出してすまないね」
最近、本当に公務が忙しいらしく、ラルフは多忙を極めているようだ。
夜はかなり遅く寝室に入るにもかかわらず、朝は必ず私よりも早く寝室を出る。
そんな多忙な中、女性に会うための時間を作るなどある意味尊敬に値するわ。