偽りの結婚
「良かった。グレイク侯爵の家は王宮並みに広いからきっと楽しいと思うよ」
ラルフは私の様子を窺って一安心したのか、ほっとしたような表情になる。
「そうだ、グレイク侯爵の家には大きな書庫もあるらしい。なんでも、童話や小説の本を中心に集めたそうだ」
王家の書庫に比べれば少ないがな…
ラルフは私の機嫌を取ろうと必死の様子。
「ふふっ…」
一国の王子が妻の機嫌を伺っている姿がおかしく、自然と笑みを浮かべていた。
すると、それまで話をしていたラルフがピタリと止まる。
ラルフが目を瞠って見つめていることに気付き、首を傾げる。
どうしたんだろう…
思わず私もまじまじとラルフを見つめる。
ただ何もしゃべらずにこちらを見るラルフ。
書類をとろうとしていた手は、空でとまっている。