偽りの結婚
――結局、あまり眠れなかった……
翌日、予定通りラルフに連れられグレイク侯爵の家へついてきた。
ラルフの言った通りグレイク侯爵の家は王宮並みに広かった。
屋敷そのものも大きかったが、グレイク家の最大の魅力は屋敷の眼下に広がる湖。
ディランと過ごした湖よりも小さいものだったが、グレイク家の湖はちゃんと整備されボートが設置されている。
これで上流階級の集まりでなければ楽しめたのに…
そんな私の想いとは裏腹に、交流会には侯爵家をはじめ多数の家の者が出席し賑わっていた。
馬車を降り湖の脇に設置された席に向かう際、ラルフは私の手を取って歩く。
そんな私たちに招待されていた人々の視線が向けられる。
「シェイリーン、大丈夫か?」
前日の睡眠不足からか、目は少し赤く、私の足取りはふらふらとして危うかった。
横で気遣うラルフは端から見れば誰もがうらやむ夫であろう。