偽りの結婚



ディランが私を家族と思うように、私もまた私を慕ってくれるディランのことを家族と思うようになった。

本当の家族であるはずのミランダとイリアはいつもあんな調子だし…




何でお父様はミランダと再婚したのかしら。

思い出すのは父ハロルドと実の母親であるシルビアのこと。

お母様は私が産まれてすぐに亡くなったため記憶はないが、美しいと評判だったシルビアとハロルドは仲睦まじく、いつも一緒にいたそうだ。

お父様はとても優しくて紳士的な人だったから、さぞ他の夫人も羨む夫婦だっただろう。





お母様がいなくても、私にはお父様がいてくれると思っていたのに。

お父様もまた私が16歳の頃亡くなってしまった。





「ディランは私の事ずっと好きでいてくれるよね?」


ミランダやイリアから愛情を示されないと、無性に誰かの愛情を得たくなる。




クーン……

ディランはそんな私の想いを察したかのようにすり寄り、問いかけに応えるように頭を寄せてきた。



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